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人の思考を刺激する本 『P・F・ドラッカー 理想企業を求めて』を読んで


E・イーダスハイム/上田惇生訳  ダイヤモンド社

この本はわかり易い。考えることが好きな経営者や管理者が読めば必ず役立つはずです。 数年前巨大企業GEを再建したジャック・ウェルチの基本方針として「世界で1位か2位になれない事業は、売却するか撤退する」のわかり易い言葉が有名になったことがありました。 これはウェルチがドラッカーに相談したのがきっかけだったと、この本にあります。 要は、どんな人や会社でも自分達に向いた仕事、夢中になれる仕事に熱中し、向かない仕事は棄てていけという当たり前のことだったのです。

我々は企業として当たり前の「集中と選択」がなぜ出来にくいのか? この本にはどうすれば良いか自分なりに考えるヒントがあります。 コミーの場合、商品が増え続けている。 なぜ廃棄を定期的に出来ないか、それにはどうしたらよいかという課題がありました。 ドラッカーは「新製品を開発したその日に、それを棄てる日を決めておかなければならない」と答えています。 私は開発目的書にその言葉を入れてみたらと思いました。

またこの本の良いところは、言葉と意味がはっきり定義されていることです。 例えば「マーケティングとは、顧客を代弁することである」 「マネージメントとは、人の強みを発揮させ弱みを意味なくさせることによって成果をあげることである」と、定義されています。 私もたくさんの経営書を読んでみましたが、言葉の定義がはっきりしていないのはどうも時間のムダと思うようになりました。

たとえば、ブランド作りの本や研究書にブランドの定義が全くないものがほとんどです。 読むに値しない本だと思うようになりました。 この本は、元マッキンゼーのエリザベス・イーダスハイム博士が、ドラッカー本人に頼まれて取材して書いたドラッカー評伝です。エリザベスさんは、その後、ドラッカー学会北海道大会にも参加されました。

この本の訳者上田惇生先生にサインをしていただきました。 かつて、「何故ドラッカーは、上田先生に翻訳を頼んだか?」とお聞きしたところ 「通常、『ドラッカーほど偉い人は間違いない』とそのまま訳してしまう。 私の場合、分からなかったり、変だと思ったら、どんどん聞く。 そこを気に入ってくれたと思う」とのことでした。 「ドラッカーにもエリザベスさんにも、そして上田先生の訳にも少しの間違いがあるはず」と考えながら読むと更に楽しいと思います。 もし、変な点がありましたら、もうドラッカーには聞けませんが、上田先生にはお聞きすることが出来るかもしれません。(記 2007.08)

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