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T字路のボランティア

「大人の生き方」とは「人に役立つ喜びを得ること」だと思う。 役立ってお金を貰うのが「ビジネス」、 お金を貰わないのが「ボランティア」。

今、大人になれずに役立たない苦しみを抱えながら、お金で疲れきった人たちが増えているのでは?…。 ずっと天気が続くと思い、傘を貸したが、雨が降ってきたのであわてて弱い順から傘を取り上げる銀行。 嘘とわかっていても、言い続けなければならない経済企画庁。 当たり前のように、先輩の真似をして収賄で罰せられた大蔵官僚の切なさ。

特に金融機関はまじめな人の「自殺者」もかなりあったし、「殺人者」までも出てしまった。 せめてボランティアをして「人の役に立つ喜び」を得ればいいのにと思う。 とはいえ、私の場合、この仲間を探すほどの意欲はないし、あまり人前ではやりたくなかった。

前置きが長くなったが、ある日の散歩時に、白い杖を持った人が、T字路の正面に向かって歩いていた。 このままで行くとぶつかってしまう。 誰も見ていない。

よしっ!小さなボランティアをしようと声を掛けた。 「右ですか、左ですか?」 「真っ直ぐです」 「真っ直ぐ行くとぶつかってしまいますよ」 「ぶつかっていいんです」 「?…」

なんとぶつかる先には「指圧・はり・マッサージ」の看板が掛かっていた。 ささやかなボランティアが失敗に終わった。

その後、彼を見掛けるたびに苦笑し、「あの時はどうも…」と言ってみたくなる。 しかし彼からは絶対に私に声を掛けられない。 その分彼の耳や脳は研ぎ澄まされているであろうが……。(記 1998.07)

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