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一ヶ所でもしっかり読んでみたら、子どもにも大人にもすごく面白い本なんです


時代は終戦直後。皆が貧乏。車もテレビも電話も本も冷蔵庫までも縁のない時代。大人は働きづめで、子どもなどかまっていられない。

場所は信州。千曲川と山と坂だらけの城下町、小諸。 主役は、伝統ある造り酒屋のお坊ちゃんで、好奇心旺盛な天才的いたずら少年。あらゆる知恵を働かせ、大人達や動物、そして自分の身体にもいたずらした物語。

いかに好奇心がすごいか。例えば我々が今すぐ出来る実験で、100人に1人ぐらいしかしていない「オナラは燃えるか?」という実験。

実は、私は上田高校時代、確か『はだか随筆』の本を読みまわし、「オナラ実験」の話で大笑いしたことがありました。あれ以来、身近に道具もあり、やってみたいと思いながらも40年以上経ってしまいました。それがこの本では、物資がない時代のしかも小学生。 この本の160ページによれば、

『脱衣所(だついじょ)の天袋(てんぶくろ)のうえからそれらの器具をおろして湯ぶねにもどる。いつか酒蔵(さかぐら)の検査室からもってきて隠(かく)しておいたガラスの漏斗(ろうと)と試験管(しけんかん)、ロウソク、小皿、マッチなどである。 まず、ぬれた手の水気(みずけ)をとってから、ロウソクに火をつけて小皿にたて風呂のふたのうえにおく。湯ぶねにつかり、湯のなかに手ぬぐいをのばして水平にひろげ、腰(こし)をちょっと浮(う)かせぎみにしてガスを発射(はっしゃ)する。(中略) ガスの泡(あわ)をうまく手ぬぐいに集め、水中で逆さにした漏斗に空気をぬいた試験管をさしこみ、手ぬぐいからガスをすこしずつ漏斗に移すと、試験管におもしろいようにガスが収集(しゅうしゅう)できる。理科の実験の手順のようにうまくいく。 試験管にガスがいっぱいになったら、手のひらで試験管の口をふさぎ、ロウソクのちいさな炎(ほのお)のうえにかざす。たしかに燃えた。……』

そして試験管のガスの実験が見事に成功したら次にもっと危険が伴う実験にチャレンジしたのである。

また、まじめな大人に復讐と称して、うんこだらけにして大成功した話。いたずらはいかにバレないか、またバレてもどうとぼけるかが大切。その後の大人の対応の仕方もユーモアと教育論として、語りぐさとなれるものです。

私も小山さんと同じ小諸育ち。高校も4年後輩。私と同じなつかしい体験や場所や方言がいろいろなところに詳しく出ていますが、ここまで知恵と知識のあったいたずらの天才がいたとは本当にビックリしました。

実はこの本、今の小学生が読んでも面白がる本だそうです。毎日小学生新聞に連載し、反響もすごかったので、本にしたそうです。漢字にルビもふってあります。 しかし、今、本が全く売れない時代。面白いこの本がベストセラーになれば、日本人の心も変わっていくのではと思いました。(記 2004.12)

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